お蚕の家(古民家 改修)
生まれ育った家へ40年ぶりの帰郷。
世代交代をして、今度はIさんが第二の人生をこの家で過ごし、先祖代々の土地と家を守っていきます。
築年数不明の古民家。大雪や台風被害で屋根や外壁の痛みもひどく、基礎はもちろんありません。窓の建付けも悪いので、すきま風がふきぬけ、床もガタガタです。
今回は、柱と梁、そして天井はそのまま…新築とは逆のパターンで改修していきます。
解体すると、昔はこんな木を土台に使っていたんだね…とびっくり。そして「栗」の素材の強さに感心。
長い距離の壁。梁も柱が曲がっていても外壁を張らなければなりません。
そこはベテラン棟梁、材料を削ったり足したり、「こういう時は”おっつけ番長”でやるしかないんだよ」とワハハ~と大きく笑いながら、納めていきます。
大工工事がある程度進んで行くと、今度はお施主さんのIさんが参加。
セルフビルドで外壁の塗装をします。そして、藤野の森のようちえん「てって」のちいさなお友だちもお手伝いしてくれます。
漆喰ぬりも職人さんと一緒に挑戦です。
着工した時はまだ暑い夏。気が付けば冬の入口まできていました。
たくさんの職人さんの力と、バイタリティー溢れるIさんと二人三脚で完成しました。
床は杉、壁は漆喰、天井はすすでやけた天井板をそのまま残した仕上がりです。
古いところと新しいところ、融合しながら、無垢の素材は経年変化しながら馴染んでいくことでしょう。
玄関に入るとすぐに見える、大黒柱と小黒柱が、この家を訪れる人を温かく迎え入れてくれます。
工事が進む中、ときおり見かける繭玉。お蚕をしていたこの家。
小屋裏は立派な梁が、昔ながらの納め方で組まれています。
昔は収入源だった「蚕」は「お蚕さま」と呼んでいました。「人間の方がよけて寝ていたんですよ。夜中はカリカリ葉っぱを食べる音がしていました」と懐かしそうに話してくれました。
家はきれいになり、時代も変わったけれど、この家を支えてくれたお蚕さま。
繭玉は片付けてしまいましたが、気持ちは受け継がれていきます。